「読売新聞に次のような記事が有ったので、原文に一切、手を加えず引用・掲載します。2008年05月24日〜26日、読売新聞より」
「正念場これから」 世界遺産委員会まで残り5週間
イコモス「普遍的価値の証明が不十分」 正念場はこれからだ――。国連教育・科学・文化機関(
ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(
イコモス)が23日未明、「
平泉の文化遺産」に対し、「
登録延期」との勧告を出したことで、県内の関係者の間に大きな衝撃が走った。「普遍的価値の証明が不十分」との厳しい評価を突き付けられた形だが、昨年登録された「石見(いわみ)銀山遺跡」(島根県)では、「
登録延期」勧告の後、2段階評価を引き上げ、逆転登録にこぎつけた。7月の世界遺産委員会までに残された時間は5週間余。関係者たちは、巻き返しに望みをかける。
イコモスの勧告は、
平泉が基本理念に掲げる「
浄土思想」の世界的意義をはじめ、登録条件を満たすと主張していた四つの根拠を「証明が不十分」とことごとく退けた。遺産を構成する9史跡を見直す必要性にも言及した。
「限りなく不登録に近い
登録延期。推薦書をやり直せというのに近い」
世界遺産総合研究所(広島市)の古田陽久所長の見方は厳しい。昨夏に逆転登録を果たした「石見銀山」のケース以上に、登録への道のりは険しくなったとみる。「文化的景観という言葉を入れたせいで分かりにくくなった。浄土庭園や骨寺村荘園遺跡は文化的景観と言えるが、9史跡全体を見た場合、必ずしもすべてが文化的景観とはとれない」
日本
イコモス国内委員会の矢野和之事務局長は、「
平泉の文化的景観は、寺や遺跡、山などを含めた一つの空間を総体として構成しているが、本来ならコアゾーン(核心地域)に含まれるべき束稲山が構成史跡に入っていないなど、問題は多い。勧告は痛いところをついている」と指摘する。
その一方、奥州藤原氏よりも古い時代に属する「白鳥舘遺跡」と「長者ヶ原廃寺跡」(いずれも奥州市)を構成史跡に加えたことに、国内の専門家から「無理やり結びつけた」との声もあった。
構成史跡の見直しについて、法貴敬・県教育長は「現時点では考えていない」と否定するが、今後の対応策については、「文化庁と打ち合わせて、どうやれば委員国を納得させることができるのか戦略を練る」と述べるにとどめた。
追い込まれた
平泉に、石見銀山の世界遺産登録に奔走した島根県大田市教委の大国晴雄教育部長は、エールを送る。「
登録延期は、登録不可ということではない。私たちも価値を知ってもらおうと努力した。自信を持って、焦らず取り組んでほしい」
■勧告の要旨
〈1〉奥州藤原氏の文化を受け継ぐ独自の存在としての証明が不十分
〈2〉
平泉の景観が人類史上、極めて優れた空間造形であることの証明が不十分
〈3〉骨寺村荘園遺跡の農村景観は、中尊寺には関係するが、
浄土思想とのつながりの証明が不十分
〈4〉
平泉の
浄土思想について、国を超えた世界的意義の証明が不十分
〈5〉アジアなど他の仏教遺跡との比較研究が足りない
〈6〉
浄土思想の観点から、推薦する史跡の範囲の見直しが必要
〈7〉個々の史跡と、周辺の緩衝地帯(バッファーゾーン)の区分けが不十分
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最大のアピールポイントに疑問符
浄土思想への理解 課題 JR
平泉駅には、世界遺産登録を願って「浄土の風・
平泉」と書かれた横断幕が掲げられている(24日、
平泉町で)「読売新聞の写真は掲載出来ません」
「
浄土思想が理解されていない」。国際記念物遺跡会議(
イコモス)が「
登録延期」を勧告した23日、文化庁の内藤敏也・記念物課長は表情をゆがめた。
「
平泉―
浄土思想を基調とする文化的景観」。それが
ユネスコに提出した推薦書の正式名称だ。他国の仏教遺跡との違いを強調するため、仏教という言葉をあえて使わず、浄土という日本独特の仏教思想を前面に打ち出した。
ところが昨年12月、
イコモスから「史跡全体と、
浄土思想とのつながりをもっと説明してほしい」と注文が付いた。最大のアピールポイントに対する疑問。それがそのまま、今回の勧告につながった。
「海外の文化財の専門家で、
浄土思想を理解している人は少ない」。
イコモスの元副会長、西村幸夫・東大教授はそう指摘する。「だって、イスラム教のシーア派が作った都市が…と言われても、日本人だって分からないでしょう」
◇
浄土思想をどうすれば理解してもらえるのか。それは当初からの課題だった。
「
浄土思想という言葉を、英語でどう表現したらいいのか本当に困った」。推薦書作成委員会のメンバーだった東北芸術工科大の入間田宣夫教授は2006年に国内外の専門家を集めた会議を振り返る。
「
浄土思想」をほぼ直訳した「Pure(純粋な) Land(土地) Ideology(思想)」との案も上がったが、議論を重ねた末、「Pure Land Buddhism(仏教)」に落ちついた。結局は「仏教」に戻った形だ。「イデオロギーではちょっと固すぎるかなと思った。イメージとしてはParadise(楽園)のほうが近かったかもしれない」。入間田教授自身、今も結論は出ていない。
登録の可否を決める世界遺産委員会は21か国で構成される。その大半がキリスト教やイスラム教文化圏の国。「ピュアランド」という言葉が、21人の大使の心にどう響くのかは未知数だ。
各国大使に訴える役割を担う
ユネスコ日本政府代表部の近藤誠一大使は、新たなキーワードとして、奥州藤原氏の初代・秀衡が供養願文で祈った「平和」をあげる。「敵味方を超えた平和思想と、
ユネスコの理念は相通ずるものがある」との考えからだ。
世界各地の400件以上の遺産を調査した西村教授も「宗教理念に基づいて作られた都市のうち、権力者をあがめるのではなく、平和を軸にしたという点で
平泉は世界的に見てもユニーク」と認める。
入間田教授も悲観はしていない。「これから1か月、みんなで盛大に議論をしていけばいい。
浄土思想という基本理念は、絶対に変えてはいけない」
浄土思想を、世界共通の理念「JODO」として発信できるか。それが世界遺産登録へのカギを握っている。
◇
浄土思想 仏教思想の一つで、死後の極楽往生を願う。戦乱を経た中世の
平泉では、現世の平和を祈る思いが色濃くなった。奥州藤原氏の初代・清衡は、「敵味方の区別なく、戦いで命を奪われた者の霊を慰め、極楽浄土に導きたい」との考えから、
浄土思想を基に
平泉のまちづくりを進めたとされる。
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発言権ない日本 状況厳しく
逆転登録 募る危機感骨寺村荘園遺跡内にある水田で、苗を1本ずつ植える参加者(25日)「読売新聞の写真は掲載出来ません」
「
平泉の文化遺産」を構成する史跡の一つ、一関市厳美町の「骨寺村荘園遺跡」。25日は朝から冷たい雨が降っていた。中世の面影が残るこの農村風景を守る大切さをPRしようと、地元住民で作る「本寺地区地域づくり推進協議会」が開いた「お田植え祭り」には、県内外から約200人が集まった。
「
登録延期の勧告で意気消沈し、参加者は少なくなるかもしれないと心配していた」。協議会の佐藤武雄会長(74)はほっとした表情を浮かべた。雨がっぱを着こんだ参加者と地元住民たちは、ぬかるんだ田んぼに入り、1本ずつ丁寧に苗を植えていった。
◇
国際記念物遺跡会議(
イコモス)が「
登録延期」を勧告してから3日が過ぎた。7月2日に始まる世界遺産委員会まで、残された時間は5週間と2日。限られた時間で何ができるのか。
平泉と同様、
イコモスから「
登録延期」を勧告されながら、委員会の本審査で登録をもぎとった「石見銀山遺跡」(島根県大田市)。逆転劇の舞台裏には、本番直前になって、「自然との共生」という新たな理念を打ち出すという大胆な作戦転換があった。
勧告を受け、島根県と大田市の担当者、それに文化庁の調査官の3人が専任となって、勧告に対する反論のポイントを探った。さらに、パリの
ユネスコ日本政府代表部の近藤誠一大使も交え、メールのやりとりを重ねながら、週に1度は東京や島根で会議を開いた。
文化庁が勧告内容を分析し、それをもとに島根県と大田市が資料を作成。外務省が世界遺産委員会を構成する21か国の動向を探った。「それぞれが役割分担して対応したが、
イコモスの指摘に反証が可能なのかどうかは、地元にしか分からない」。大田市の石見銀山課長だった大国晴雄教育部長は強調する。
勧告から3週間後、3人はパリに飛んだ。完成した「補足情報」は英文で110ページ。「勧告の後は、土日もなければ、昼夜も関係なかった」。大国部長はそう振り返りながら、同じ境遇となった
平泉にエールを送る。「
登録延期は不登録ではない。楽観もする必要はないし、悲観すべきでもない」
とはいえ、状況は昨年以上に厳しい。世界遺産の登録率は年々下がっているうえ、日本は昨年まで世界遺産委員会の委員だったが、今年はオブザーバー参加で、発言権はない。文化庁の内藤敏也記念物課長は「委員から外れたのは、情報交換や働きかけに不利」と危機感を募らせる。
県と一関、奥州、
平泉の3市町の担当者は26日、文化庁を訪れ、ようやく対応策について協議を始める。
正念場はとうに来ている。
◎
この連載は青木佐知子、早坂直樹が担当しました。
下記リンクのヤフーニュースです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080523-00000002-yom-sociFC2 Blog Ranking クリックをお願いします
theme : 岩手県
genre : 地域情報
tag : 世界文化遺産 登録延期 平泉 岩手 浄土思想 イコモス ユネスコ